最近 文章暗いけど、割と明るい。

 台風が久しぶりに直撃している。風と雨が窓を叩く。台風にばれぬようそっと窓を少し開け、外を覗き見する。隣の家のアンテナは揺れていない。風は思ったより低いのだなと心に思い、またそっと窓を閉める。昼寝のせいで眠気はあるのに眠れない。微量の頭痛にイラつきながら、三連休の貴重な真ん中の夜を自室で過ごす。休日に家でゆっくりするのは久しぶりだ。最近は夜になると居酒屋に行き、ビールとつまみで本を読んでいた。酔っ払いだらけの居酒屋は好きだ。頭上を無数の明るい声が交差する。だらけた熱気と匂いと音の中、頭を垂れて本を読むとそれらに包まれているようなやすらぎを感じる。

 

 仕事が増えて帰りが遅くなればなるほど、毛を剃るようになった。首から下、腋毛と陰毛は整え、あとは全て剃った。剃れども剃れども翌日には芽を出す毛を見て、このやろうと思いつつ、身体は健気だなと少し愛おしくなった。家族が寝静まった金曜日の夜に、自分のだらけた裸体を鏡に隅々まで映して眺める。こんなところにホクロがあるのかとか、ケツが思ったより汚いなと発見を楽しんだ。それで体を少し綺麗にしようと、サプリやら化粧水やら乳液やら買い漁って、自室でできる筋トレをして、自分の身体をいたわっている。自分の肌や毛、身に着けるものに興味がなかったし、こだわりがある人がいても感心はすれど共感は抱かなかった。今なら少し共感できる。気にし出した今、どんどん深みに嵌る予感がしてる。

 

 今までの好奇心が下火になった。演奏と異性。今までずっと中心にあった二つが鳩尾から下・恥骨より上の内臓の隙間に降りて行った。興味をなくしたわけではなく、穏やかになった。ある人の演奏を聴いた帰り、ビールを飲みながら歩いた。私はそんなに気張らなくていいじゃないかと急に感じた。柔らかい夜だった。ぐっと重心が下がって足の歩みが変わった気がした。寂しさは今まで通り感じてるし、恋人もほしい。もっと演奏上手くなりたい。それらの気持ちも含め、ガラスケースに収めて心の中心から外してる。人は誰も私を深くは求めていない。気持ちを急いて練習しても疲れてしまう。夢十夜の第一夜で、女の墓を百年眺めるような質感で、ガラスケースを眺めている。いつか露に濡れた真白な百合が咲くかもしれないと思いながら。