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私が用事で外出するとき、私が行きたい方向の地下鉄がいつも改札を通るか通らないかのところで出発する。乗り場に到着すると同時にスムーズに地下鉄に乗りたいのに、アナウンスと地下鉄の音と地下から吹き上がる生ぬるい風を受け止めながら「ああ、また行ってしまうのか」と思いながら改札を通る。もっと考えて家を出ればいいのだろうが、最近は運試しみたいに考えていて、スムーズに乗れればその日は運が良く、逆であればあまり良くないと思うようにしている。つまり今のところあまり良くない日しか過ごしていない。一番良く使っている最寄駅だけタイミングが合わないのは何か相性が悪いのだろうな。お供え物が必要なのだろうかと、次の地下鉄を待ちながらぼんやりと考える。

移動中漫画版の「五色の舟」を読む。戦時中の見世物小屋の一派が牛と人間の合いの子である「くだん」を仲間に加えようとして一悶着起こる話だ。「くだん」は主人公たちが引き取る直前に軍が徴収してしまう。その時トラックの隙間から見えた「くだん」と目が合った主人公と仲間の桜は、その日以降、小屋の仲間が次々に別の舟を乗り換えて行く夢を見る。「くだん」の話によると歴史は一つの内海で、そこに浮かぶ舟がそれぞれの世界と歴史の航路を持っている。つまり日本に原爆が落とされて敗戦するとは別の世界が存在し、「くだん」はその人が望む世界に連れていくことができる。話の途中で「くだん」を敵国が攪乱の為に送り込んだ兵器と信じる軍人が発砲し云々穏やかではない展開になる。

 

楽器のオイルを購入し、「敵国降伏」とデカデカと書かれた神社に向かう。長い参道の両端には出店がたくさんでていた。下火になったのに「ハンドスピナー緊急入荷!」という看板が掲げてあり店主が在庫に困ってる姿が目に浮かんで笑ってしまった。参拝の長い列に並びお参りする。正月が終わった。

 

 

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