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土曜日、8時に起きる。病院に行かねばならぬので今日の練習はお休みする。今朝夢に見た後輩を思い出していた。明るいのだがコンプレックスを抱えているのが表情から分かる子だった。多くの不満を抱えつつも相手を傷つけるのを恐れているように見えた。決して大きくない身体を鍛えてシャツがはち切れそうになるほどの筋肉を獲得していた。どうしてこんなに筋肉があるのかとおどけたように尋ねると、「小学生の頃、いじめられていて見返す為に鍛えた」と言われ、同情すると共に笑顔の裏にある反骨精神が少し怖くなった。過去の経験によってが生み出された過剰な筋肉が、彼の心を少しずつ歪ませてるような気がした。実際、後輩の中でも少し浮いているように見えた。今は東京で働いていると聞いた。高校を卒業して以来会っていない。

 

朝食にソーメンを二束食べて病院へ向かった。雨がしとしと降っていた。風はそこまでなく、近づいているという台風の予感はあまり感じなかった。病院の待合室は相変わらずいっぱいだった。団地の側にある病院だからかいつも人が溢れ返っている。関西弁の母親が子供に宿題させているのを横目に神曲を読み進める。診察で処方された胃薬を飲むと胃が痛いと伝えると「恐らくストレスで薬では制御できないほど胃酸が出て結果的に胃痛の副作用が出ている」のようなことを言われてなんじゃそりゃと笑ってしまう。結局胃薬を無しにしましょうとなり診察終了。咳は止まってきたのでまあ良い。

薬局に行くまで傘を差さずにできるだけ雨に濡れないゲームをする。建物の軒を爪先立ちで歩いたり、ぴょんぴょん飛んだりしたが、濡れた。しっとりした状態で薬局へ。前回の薬はどうだったかと聞かれたのでとても美味しかったと答えたところ笑われてしまう。でもほんとに美味しかったんだ。食後、あの水薬を飲むのを楽しみにしていた。

 

帰って疲れてしまっていつの間にか寝た。夢は何も見ていない。起きて、雨は落ち着いていたのを確認して外に出た。近所の古書店にしばらく行っていないので探し物をしようと思っていたのだ。病院のある角を右に曲がり、小さな商店街の一番奥にある古書店に入ろうとしたが、先に入っていた顔色の良くない客が私と同じボーダーのシャツを着ていたので躊躇してしまう。店外にある100円の棚を眺めながら早く出ておくれようと心の中で願っていたが、中々出てくれないので痺れを切らして突入した。できるだけ棚の影を縫うように歩き息をひそめ、その客が出たところでやっと背を伸ばして探し始めたがすぐにその客が戻ってきてしまった。客も私を見てうわあという顔をして足早にレジに進み、100円の本を購入して帰っていった。結局探していた本は見つからなかったのだが、別の本を2冊購入。帰って先日購入した山田詠美の「ベッドタイムアイズ」を読んだ。叫びをそのまま文章にしたような出口のない物語だった。とても良い。

 

 

 

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