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 よく晴れた天気だった。ただ日が落ちると寒い。

 仕事は知らん。

 

 特にないのだけど、仕事中は何も考えないのが一番だと思った。移動は全部走っていたのだけど、肉体が疲れると雑念が消えて目的だけが残ったので行動に迷いがなくなるというか、他人が作業しているのを見ているような感覚だった。お陰で朝起きた時に全く疲れがとれていない。正社員とかなったら身がもたないな。どうやって生きてんの彼ら。

 光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を読み始めた。萩尾望都の漫画版は読んでいたのだけど小説は全く手をつけてなかった。悲しいことに想像力がめちゃくちゃ落ちてることに気が付いた。美しい情景の文章に全くのめり込めてないし、うまく頭の中で映像化できない。小学生の頃は、読み始めると周りの音なんて聞こえなかったのに、今は周りの音がどんどん大きくなるし、頭の声も大きくなる。のめり込んだ後の「ここはどこ」みたいな別の世界に行って帰ってきたような感覚が好きだった。シャボン玉の中から景色を眺めるように、フワフワ漂いながら膜を通して世界を眺めるような幻想的な錯覚になっていた。「読書は心の旅行」みたいなニュアンスのことをよく聞くけど、それは正しい。読書を始めて、旅行から戻れなくなることはあるのだろうか。映画「8 1/2」の冒頭の悪夢のシーンで砂浜で空を飛んでるのに紐が足についていて、下からニヤニヤした男が引き戻そうとする。あの紐が切れるとどこかに飛んで行ってしまうように(映画では引き戻されるんだっけ、墜落するところで目が覚めるんだっけ。いずれにせよ悪夢からは引き戻される)読書も現実と旅行をつないでいる紐が切れてしまうとやはりその本の世界に入るのだろうか。